METAL TRASHING FIT II

by Yuji "Rerure" Kawaguchi #STDRUMS

Daily

カクシンハン『タイタス・アンドロニカス』を100倍楽しむ方法

投稿日:2017年8月12日 更新日:

カクシンハン第11回公演
『タイタス・アンドロニカス』
本日吉祥寺シアターに入り準備スタート。
月曜日より開幕となります。

カクシンハンへの出演も(ポケット公演も含めて)5回目。
舞台という新たなるステージは勿論、
シェイクスピアの魅力に触れられることが大きな魅力です。

そして毎公演恒例の、上演するお話の纏めを書いていきたいと思います。
題して「カクシンハン『タイタス・アンドロニカス』を100倍楽しむ方法」
シェイクスピア(古典)はストーリーをわかっている方がより楽しめると思います。
「戯曲」という文字通り、曲を予習してライヴに向かうようなものですね。

まず今回は、お話の内容を結構しっかり目に書いてみようと思います。
※ストーリーを伝えるため、一部に差別的・過激な内容が含まれます。
————-

ローマの皇帝が亡くなり、
長男サターナイナスと次男のバシエイナスが帝位を手に入れるため選挙の真っ最中。
しかし、護民官(えらい人)の間では衆議一決してタイタス・アンドロニカスの名前が挙がりました。

タイタス・アンドロニカスさんは超強い武将。
40年間戦い続け、今回5度目の凱旋。
ゴート族という難攻不落の民族を打ち負かし、
女王タモーラとその息子たちを捕虜として帰ってきました。
民衆の信頼も厚いです。

戦死した息子たちの棺を埋葬するのに際し
生け贄としてタモーラの息子、長男が選ばれます。
懇願も無視され息子を殺されてしまい、タモーラはタイタス・ローマを恨みます。

さて、護民官の代表であり、タイタスの弟マーカスも合流。
タイタスに王位継承を促します。

ここから

タイタスは王位に就くことを拒否し、サターナイナスを選び皇帝へ。
→サターナイナスはバシエイナスと婚約していたタイタスの娘・ラヴィニアを妃として迎える。好きだったんかーい。
→タイタスは喜び、献上品として捕虜のタモーラ一族を渡す。
→サターナイナスはタモーラに一目惚れ。捕虜は無条件で解放。タイタスの苦労よ…。
→ラヴィニアを取り返そうとするバシエイナス。タイタスの息子たちも擁護する。
→行く手を塞いだ息子の一人をタイタス自ら殺害。忠義すぎる。
→サターナイナスは一連の侮辱を受けたと憤慨。傍若無人乙。
→サターナイナス、もはやラヴィニアなんぞどうでもよく、タモーラを(改めて)皇后とする。ひでぇ。
(さっきまで捕虜だったタモーラ一族の地位が一瞬で逆転する)
→タモーラがこの一連をまとめ、一件落着(と装う)。

これらが凝縮されて一気に起こります。
(ですので序盤は特に見逃し厳禁です!)

さてタモーラさんにはムーア人(アフリカ系黒人)の情夫(セフレ)、エアロンがいます。
悪いことを平気でやってのける性格です。
ラヴィニアをどうにかしたいタモーラの息子たちにエアロンは【計画】を吹き込みます。

翌日、皆で公式での狩り(接待ゴルフみたいなもの)が行われている森のなかで、
エアロンはタモーラにも【計画】を話します。
そのときバシエイナスとラヴィニアが通りかかる。
エアロンに呼ばれた息子たちにバシエイナスは殺害され、
ラヴィニアの懇願もタモーラには無論届かず、連れて行かれてしまいます。
(タイタスにやられたことをやり返している)

バシエイナスの遺体は大きな穴の中に放り込まれました。
そのあとエアロンはタイタスの2人の息子を穴へおびき寄せ、
2人もその穴へ落ちてしまいます。

直後にエアロンの導きでサターナイナスが穴にいる遺体と2人の息子、
計画をほのめかす手紙と(エアロンが埋めた)報酬を見つけて
言語道断で2人の犯行だと決めつけてしまいます。
その間にラヴィニアはタモーラの息子たちから強姦され、
犯行が言われ・書かれないように両腕と舌を切り落とされてしまいます。

息子の釈放を求めるタイタスに対して、
「誰か一族の片手を差し出したら返す」とタモーラが言い放つ。
タイタスは自らの片手を切り取り差し出すものの、それも罠。
戻ってきたのは息子2つの首とその片手でした。

これら【計画】によって、
・タイタスは片手を失い、
・娘の(強姦された上に)両腕と舌を切り取られ、
・息子2人を失いました。
家庭環境はどん底。
更に残った息子ルーシアスは捕われた息子たちを救おうとした結果
ローマから永久追放を言い渡されてしまいます。
ルーシアスはゴートへ向かい兵を挙げて復讐すると誓います。

ある日のこと、
ラヴィニアが見つめ続けていた本を切っ掛けに強姦されたことに気付き、
棒をくわえて地面に文字を書かせることで犯人が明るみに。
アンドロニカス一家の復讐が始まります。

一方その頃、
タモーラと皇后の間で子どもが生まれたという知らせが入りました。
しかし包まれていたのは黒い新生児・エアロンとの子どもでした。
エアロンはその場に居合わせた乳母を殺害・息子たちを諭して生まれてきた子どもと逃亡。

タイタスの繰り返される奇行と、ゴート族を合わせたルーシアス軍がローマへ進軍。
(進軍中にエアロンと新生児を発見。悪事が次々と発覚)
サターナイナスは激怒困惑憔悴。
タモーラは狂ったタイタスに対して自ら動き、ことの鎮静を計ります。
息子たちと「復讐の女神」と変装をしタイタス家へ。
復讐の代わりに、ルーシアスと皇帝とで和平会談を提案します。
タイタスは息子たちを置いていくかわりにその条件を飲むこととしました。
タモーラは皇帝を迎えにいくためその場を去ります。

「この瞬間を待っていた」と、狂っていたふりをしていたタイタス。
変装は呆気なく見破られ、吊るされる息子たち。
喉を切り殺害。ラヴィニアが持つ水盤に流れ出す血液をためます。

和平会談のため集まった前に登場したのはコック姿のタイタス。
彼が調理したパイが振る舞われ、ラヴィニアはタイタスに殺されます。
それはタモーラの息子たちに陵辱されながらも生きる辛さへの終止符。
ことの真相を知り、サターナイナスは息子たちを今すぐ連れてこいと命令しますが、
彼らは既に、パイの材料として食卓とタモーラの胃の中にいるのでした。
タイタスはタモーラを殺し、
サターナイナスはタイタスを殺し、
息子ルーシアスはサターナイナスを殺しました。
————-

これまで関わっていたシェイクスピアは割とシンプルでわかりやすいストーリーが多かったですが、
今作は
「両腕を無くしたしばらく後に棒で名前を書いた」
「ラストの和平会談でまずラヴィニアをタイタスが殺す」
など、序盤の目まぐるしい展開は勿論のこと
ツッコミどころや奇天烈な展開が多い作品です。

そのぶん起きている事象のインパクトは強烈なものばかりなので、
ストーリーを理解していくというより
より感覚的な面白さを体験できると思います。
したがって今回は作品の紹介を細かくしてみました。

「ミュージシャンに観てほしい作品」
音階よりもメロディックで歌詞よりも流暢な台詞。
分厚い強度はSYSTEM OF A DOWNを彷彿とさせるヘヴィさ。
公共の場で人を殴っていいボクシングのように、
野菜ニンニクマシマシで言葉のマシンガンを味わえます。
これはインターネット上から拝借した知識なのですが、
今戯曲は「聞きたくもない」「口を塞げ」「喋らせるな」
など、【言葉を止めること】に関連する台詞が多く使われ、
その象徴として「舌を切り取られた」ラヴィニアが存在するとのこと。なるほど…。

僕視点での見所は、なんといってもフルキットでのドラム演奏です。
初参加だった『ジュリアス・シーザー』以来のフルキット。
バンドでのライヴは他の楽器もありマイクを通したサウンドが殆どとなりますが、
生声と、空間を活かしたアコースティックなセッション。
広い会場で爆裂する生のドラムサウンドを体感出来るまたとない機会です。
肉体を駆使したダイナミックかつ血が沸く立体的な演出。
故に、言葉だけが出るときの「引きの美学」が際立ちます。

本公演は「若い世代で作り上げるシェイクスピア」というテーマもあるようで、
タイタス・アンドロニカスという巨大な生命体を全力で動かそうとしています。
懸命で、がむしゃらで、打たれまくる。圧倒的ライヴ感。
後ろから見ておりますが、ガチンコファイトクラブを彷彿とさせる一体感です。
(いつものことながら【飲み担当】です笑)

演者目線でいえばエンターテイメントであること・オーディエンスを最優先で考えながらも、
使う台本は400年以上前に書かれたものです。書かれた内容をそのまま読む。
エンターテイメントであるのに伝統は守られている。
演奏できないからと簡単にしたフレーズに置き換えることもしない。
飾ることなく台詞の面白さをダイレクトに伝える演奏者の手腕が問われる。
シンプルだけど奥が深いエイトビートの研究のようなものです。

復讐に復讐が上塗りされていく悲劇。
タイタスが悲しみに明け暮れる。
しかし切っ掛けを作ったのは彼であるのもまた事実。
タイタスの復讐が始まるとき、あなたはどのような立場にいるでしょうか。
そしてラストシーン。果たして何を思うでしょうか。
善悪の真理を問うような作品です。
ロックでありメタルでありハードコアだなぁ。

新しいライヴの形がここにあります。
では【ライヴハウス吉祥寺シアター】でお会いしましょう!

2017年 8月14日~8月20日
カクシンハン第11回公演
『タイタス・アンドロニカス』
会場:吉祥寺シアター

◆史上、最も、美しく、残酷な、シェークスピア戯曲。
カクシンハンでの初演から3年。新演出で蘇る、復讐の美学!

演出 : 木村龍之介
作:シェイクスピア
翻訳 : 松岡和子

~あらすじ~
ローマ帝国の武将タイタス・アンドロニカスは、長年にわたるゴート族との戦争に勝利し、凱旋帰国する。この戦いで多くの息子を失った彼は、亡き息子たちの魂を鎮めるために、捕虜にしたゴート族女王タモーラの長男を生け贄にすることにした。タモーラの懇願を無視し、タイタスらは彼女の長男の体を切り刻み、火に投じた。これが復讐劇の始まりだった―。

■CAST
河内大和
真以美
岩崎MARK雄大
のぐち和美 (カクシンハン/青蛾館)
白倉裕二
東谷英人(DULL-COLORED POP)
鈴木彰紀(さいたまネクスト・シアター)
佐藤滋(青年団)
小田伸泰(俳優座)
阿部博明(東京新社)
比嘉将太(オスカープロモーション)
久仁明(SHIMOFURI)
木下 藤吉(アクトレインクラブ)
青井雄(演劇集団TOY′s BOX)
関淳平(フラッシュアップ)
佐鳥結耶(Soymilk Management)
室岡佑哉(仕事)
松田祐司(仕事)
添田勝衣(フラッシュアップ)
佐々木雄太郎
近藤修大
大洞雄真
ユージ・レルレ・カワグチ(#stdrums)

■TIME TABLE【全10ステージ】
2017年8月

14日(月)19:00
15日(火)14:00★ 19:00
16日(水)19:00
17日(木)14:00★ 19:00
18日(金)19:00
19日(土)13:00★ 18:00
20日(日)13:00
★星印はアフタートークを開催。

※当日券の受付開始は開演の1時間前、開場は開演の30分前です。
※未就学児童のご入場はご遠慮いただいております。
※開演時間を過ぎてからのご入場はご指定のお席にご案内できない場合がございます。

■TICKET
全席指定席・税込価格
◇一般 5,000円(前売・当日共に)
◇U22チケット 3,500円 ※各回10席限定&入場の際要証明書提示

【取り扱い】
◇イープラス
http://eplus.jp/
(カクシンハンで検索)

◇J-Stage Navi
03-5912-0840(平日11:00 ~ 18:00)
http://j-stage-i.jp/

◇カンフェティチケットセンター
0120-240-540(平日10:00~18:00)
http://www.confetti-web.com/detail.php?tid=39500&

■STAFF
美術 : 乘峯雅寛(文学座)
照明 : 中山奈美(文学座)
映像 : 松澤延拓
音響 : 丸田裕也(文学座)
殺陣 : 白倉裕二
美術助手:増田靖子
演出助手:大河日氣・篠田美沙子
舞台監督 : 浦弘毅(ステージワーク URAK)

宣伝デザイン:谷内晴彦 (desegno ltd.)
宣伝写真 : WATARU YONEDA
宣伝映像 : 松澤延拓
制作 : Real Heaven・カクシンハン
制作協力 : J-Stage Navi・カンフェティ
PR&Copy:佐藤りんだ(株)L.LovesR.
制作助手:井上哲・伊井ひとみ

企画:カクシンハン
プロデューサー:木村龍之介
主催 : 株式会社トゥービー

■吉祥寺シアター
〒180-0004 東京都武蔵野市吉祥寺本町1丁目33番22号
TEL 0422-22-0911

それでは、続きはwebで。チーン。

-Daily
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