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20140425 part3. I met John Bonham.

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LONDONから約3時間掛けて、
RushockはSt.Michael and all angels Churchへ到着した。









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隣に家屋が一軒あるだけで、平野がずっと遠くまで広がっている。
トーキョーではまず考えられない、幻想的な世界。
鳥の鳴き声と雨音がくっきりと耳に入ってくる。









木の扉を開けてゆっくりと教会内に入る。
さまざまな形の墓石が並ぶ。
立ち入る人も多くないのか、芝生が綿みたいに生き生きとしている。
1つ1つを確認しながら、ぐるっと裏のほうに回ってみる。









開けた広場に出ると、
明らかに個性的な墓石が目に飛び込んできた。









その瞬間、心臓が止まるくらいの衝撃を受けた。
思わず駆け寄りながら、涙が溢れ出てきて止まらない。
必死に言葉を出そうとするも、感情が交錯し動揺に近い状況。
あなたに会いに来ました。
会うために日本から来ました。
まともに文章にできたのはどの位経ってからだろうか。









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世界を熱狂させた伝説のバンドのドラマーの墓は
両手を広げて納まる位のサイズ。
特別な扱いをされているわけでもなく、
他の方々と肩を並べるように眠っている。
お供えとしてシンバルやスティックが並ぶあたりが、
なんとも彼らしい。


僕も普段使っているLudwigの5Bを持ってきた。
彼が使っていたとされているものと同じスティックだ。
あとは名刺の裏に手紙を電車内で書いた。
これもTHE SONG REMAINS THE SAMEのデザインを頂いたもの。
スティックと一緒に置かせてもらった。









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強くなる雨のなか、写真の位置に座る。
イングランドの旗が雨雲の強風に煽られる。
隣に生えている木のお陰で、少し雨が和らいでくれた。
横に眠っている別の方にもちょっと我慢して頂く。


まずはBooker T & the M.G.'sのSoul Dressingを聴く。
このアルバムに収録されている"Outrage"
ハードヒットでスウィングしているAl Jackson, Jrのドラムは、
ボンゾがインスピレーションを受けたと確信していて、
この曲を彼と一緒に聴きたかった。


懐かしい。
いい曲だ。
全然違うよ。


果たしてジョンはどう思ってくれただろうか。









そして、いよいよLED ZEPPELINを聴く。
ほぼ全てのアルバムを持って来ていて、
CDプレーヤーが雨に濡れないようにディスクを選定する。
散々悩んだ挙句、IVにした。
やっぱり、これになった。
僕がZEPPにのめりこんだ切欠のアルバム。
Black Dogが大地を揺らし、Rock n' Rollが空気を切り裂く。
素晴らしい。最高のアルバムだ。


だけど、頭ではここに来るまでに聴いていたアルバム
your time is gonna comeが鳴っている。









作品の途中という無礼さを承知の上で、再生を停止した。
すぐに1stにディスクをチェンジする。
Good Times Bad Timesがヘッドホンから流れると、
曲の幕開けと共に全てが納得できた。









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バンドが成功して製作したIVは、既に見ている世界が違う。
今僕が見ている空は、彼らの故郷の空だ。
聴覚・視覚・嗅覚・触覚・味覚の全てがサウンドと溶け合う。
やぼったくて、田舎臭くて、エネルギーに満ち溢れている。
この世界が作り出したアルバムは1stだった。


Gonna Leave You, You Shook Me, Dazed & Confused,
世界をあっと言わせんとばかりの雷のようなドラムが身体を貫く。
こんなにハードヒットするサウンドが当時あるだろうか。
曲と同調するように雨脚と風もどんどん強まっていく。
最高。


電車内でも印象強かったgonna gome.
ゆったりした曲調でもボンゾらしさがしっかり生きている。
バンドインするときの衝撃はどれも生半可なものじゃない。
Black Mountain Sideの後に突然始まる
Communication Breakdown.
よりパワフルに、フェードアウトしてもドラミングは限界を知らない。
スタジオ盤でありながらもセッションの緊張感を持つ
I can't quit you baby.
そしてラストの8分を超える大作、How many more times.
テーマを終えると中盤からセッションが始まり、
自由なドラミングが宙を舞う。
常識に囚われない発想で曲が豊かに転がっていく。
様々な表情を、自然に・大胆に表現するドラム。
決まりきっていない・しかし柔軟で常に驚きを与えてくれる。


集団において「こうしたい!」を貫き過ぎるのはただの我儘だ。
では気付かれない様に身を潜めて無難にこなすべきか。
それは違う。
違うと、彼が言っている。


俺はこんな具合だ。
お前はどうだ?
自由を忘れていないか?
信じるものを貫いているか?









ラストのけたたましいシンバルワークを取りこぼさず聴き終えたとき、
1つの確信を持った。
ジョンは僕にそれを教えてくれた。
こんな経験、二度とないよね。









すっかりずぶ濡れになった身体を起こす。
いつまでも居座ることはできるのだけど、
なにかのタイミングが別れを示唆してきた。









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実は写真は載せているのが全てで、これ以外は撮っていない。
(充分な量かもしれないけど…)
彼はロックンロールスーパースターとなり、
多くのファンと写真撮影をしてきただろう。
しかし、相手が墓石となってしまったとはいえ、
一方的な思い出のためにボタンを押すのは気が向かなかった。
もうジョンからは充分、経験と助言をもらったのだから。
でも最後に、今回の旅に一緒についてきてくれた相棒と
写真を撮ってもらった。
目の前に置くと、何粒かの雨がジャンベを叩いてくれた。
福音を聴きながら写真を撮り終えると、
友達が何か偉業を成し遂げたかのように、
本当に嬉しい気持ちになった。









ここで肝心なことに気付いた。
スティックや名刺は持ってきたが、お墓参りなのにお花が無い。
来ることに精一杯で、餞になるものの用意をすっかり忘れていた。
全く何をやっているのか。


何か餞になるものは無いかと身の回りを探してみる。
買ったレコードもTHIN LIZZYじゃ意味無いし。
まだ食べてないサンドイッチも迷惑なだけだ。


こっちに来て買った革ジャンも探してみる。
普段使わない右ポケットに手を突っ込んでみると
2枚の5ペンスが出てきた。
数時間前の記憶が蘇る。


1枚は餞別として墓石に置かせてもらい、もう1枚は持って帰る。
この旅でこのポケットを触らなかったらいつ気付いていただろうか。
ロンドンが導いてくれた、僕とジョンとの絆だ。









僕は感謝の気持ちとお別れの挨拶を止め処なく伝えながら、
その場を離れた。









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教会の正面に戻ると、館内には自由に入れるようだ。









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入り口には墓の配置リストが掲載されてあった。
ジョン煩悩ナム。









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タクシーを待つ間の雨宿り。
雨音のリズムと鳥達のハーモニーが近付き過ぎず離れず、
自然な音楽を作り出している。


おかしいと思われるかもしれないが、
この一連を、僕は心中で思うだけではなくずっと話し掛けていた。
彼の演奏を聴くことで、返答をもらった。
最初に墓石と目が合ったとき、自然と涙が溢れてきた。
親族の前だったとしてもこうはならないだろう。
彼は死んでしまい、この世にはもういない。
だけど、僕はジョンボーナムに会った。
僕にとって本当に大切な存在であることを気付かせてくれた。


ここに来て改めてジョンボーナムの偉大さを知り、
ようやくLED ZEPPELINの片鱗に触れられた気がする。
そして今後もLED ZEPPELINを敬愛し、
そのドラムスタイル・サウンドを受け継ぎたい。
この巡礼は、これまでの人生で最も純粋で神聖な時間だった。


遠くからタクシーのエンジン音が聞こえてくる。
今日はもうさよならだけど、また必ず来ます。
これからも永遠の目標とさせて下さい。
ありがとう、John Henry Bonham!

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