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全公演完遂 『カクシンハン版 リチャード三世 & ヘンリー六世三部作』

終わった頃には
「あっという間だった」などの
それらしい言葉が残るのだろうと予測していたけれど、
4月から、気付けば6月になっていた。
5月ってヤツは一瞬で駆け抜けていった。
毎日書いていた日記が記録として残っているので、確かに2016年に5月はあったらしい。
そして今現在、寝ても起きても頭に過るのはあの場のことばかりなので、
濃密な1ヶ月がそこにあったのは間違い無いようだ。










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『カクシンハン版リチャード三世 & ヘンリー六世三部作』
5月6日~5月31日のロングラン公演を終演しました。


ようやく生活サイクルが現実に戻ってきました。
『オセロー』では楽曲提供という形で参加させて頂き、
前作『ジュリアス・シーザー』からステージでの共演。
今回は2度目のセッションということになります。










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ドラムからして前作『ジュリアス・シーザー』との最大の違いは
ステージの規模と位置。
広大な空間を後ろからどっしり支えたのが『ジュリアス・シーザー』だとすれば
肉体的な距離感で役者とぶつかり合ったのが今作といえます。
地声で闘う舞台の現場では、小規模であるメリットもあるようです。
またBGM &ドラム(効果音)ではなく、
ドラムのみで音響の構築をすることが多かったのも大きな違いです。


その距離感での演奏。
効果音だけではなく、オンリズムで役者を乗せ、
場面・キャラクターのテーマをいくつか作りました。
スピーカーから流れるBGMの場合
音楽を聴きながら会話ができるように問題は発生しない。
しかし打楽器との共演となると、音量の大小に関わらずバッティングすることがあります。
ジャズでいうところのコンピング。台詞が音符になる。
このセッションが実に面白く・難しい。


最大の違いは
「ストーリーとドラムの関係性」
でした。










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そんな『カクシンハン版 リチャード三世』。
世界観を掴む切欠となったのが
河内大和氏と何気なく交わしていた会話
「紙とペン(インク)をなんであのタイミングで欲しがるんですか?」
「絵を描きたいからだよ」
これがピンと来ました。
後先考えず、理屈もなく、流暢さやロマンもない。
リチャードはそういうヤツだったのです。










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耽美的な『ジュリアス・シーザー』に対して、肉体的な『リチャード三世』。
流れるような台詞ではないが、生々しい言葉がボディブローを打ってくる。
物語を支える芯としての演奏ではなく、
共に乗っかっていき、総崩れも危ぶまれる。
役者と演奏のみならず照明や音響までもが力量を試される
なんともエキサイティングな綱渡りでした。
木村龍之介氏とは"White Albumみたいだ"という話なんかも。
バラバラだけど一本の線は繋がっている。










『ヘンリー六世三部作』は捉え方が少し違い、
POCKET公演と称した、より客席と距離が近い手段。
こちらはシェイクスピアらしい?言い回しが多いような印象。
プランタジネット・ヨークの口の悪さと言ったら完璧です。
ここまで公に悪口を吐けるのは舞台冥利に尽きるのでしょうか。
第一部の序盤は水銀灯が点いたまま始まり、渋谷サイクロンでのGAUZEそのもの。
僕も(敢えて)台本を横に置き、読みながらの即興インタープレイを楽しむ。


…だったのだけど、恐るべきは役者陣。
客席に台本係(プロンプ)がいるのにも関わらず、
誰もが台詞をほぼ完璧に成立させていました。










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約2か月の稽古を経て1ヶ月の本番。
内容は2作品。しかも厳密にいえば70分の3部作と2時間半の1作で4つ。
其々のストーリー・キャラクター・世界観を守りつつ
台詞とアクションを叩き込む。並大抵のものではありません。
しかも舞台が少し客側に傾ている「開帳場」。
役者にストレスを与えることで緊張感が生まれる。とのことですが
それ以上の重荷が皆さんにはあったと思います笑。


作り込んだ『リチャード三世』と奔放に楽しんだ『ヘンリー六世三部作』
そして今回はドラムだけではなく『リチャード三世』ではイーリー司教。
『ヘンリー六世』でも台詞を頂き、舞台役者デビューをさせて頂きました。
立ってわかりました。ほんと皆さんよーやるわ笑。
その台詞1つを言う・伝える・投げ掛ける・与えることの大切さ。
相手との関係性や、言い方1つで大きく意味や印象が変わるなど。
自然にやること・敢えて演技をすることで立つこと。
やはり音楽と同じでした。是非またお願いします!笑。


また休憩中にも中説?をやらせて頂きました。
お陰様でパンフレットは完売したようです。お力添え出来たのでしたら幸い。
前回今回と対談内容がとても面白いので、ご購入頂いた方は是非熟読されて下さい。










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また今回の会場、シアター風姿花伝はドラムキットの使用がNGだったのですが、
それを可能にしてくれたのが"TAMA Cocktail-Jam Kit"です。
狭い足場でもタイコから生えているポールと
アタッチメントのお陰で多点キットが設営可能。
コンパクトキットでありながらも16インチのキック・14インチのフロアタム。
迫力ある口径でメロディアスなプレイが実現しました。
そして今回最大に功を奏したのは、片面ヘッドのタイコなので、
倍音がカットされ、防音が完璧ではない劇場でも使えたということ。
「鳴り過ぎない」というのにこういったメリットがあるとは…。
大変お世話になりました!


◆ドラムセッティング◆
Drum Set - TAMA Cocktail-Jam Kit
Pedal - Pearl P-122TW
Cymbal - Paiste Giant Beat 18" 15"










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ツインペダルは家に手ごろなものが無かったので菊間慎太郎氏よりお借りいたしました。
セッティングすればツインペダルが使えるのもこのキットの魅力ですね。
『ヘンリー六世』では雰囲気を変えるために、
第一部はカホンとHAPI Drumというセッティング。
メロディ楽器はずっと遊んでいられますね。










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思い出の整理がつかず、なんとも過剰書きとなってしまいました。
よく叩き、よく飲んだ1ヶ月でした。
奇しくも千秋楽の5月31日はボンゾの誕生日。
最終日ということでハコ入りして誰もいないうちに最後のウォームアップ。
公演が終わって気付けば心地よい夜風が吹いていました。
「さぁ、俺たちの不満の冬は終わった」
充実の春をありがとう御座いました。










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それでは、続きはwebで。チーン。