METAL TRASHING FIT II

by Yuji "Rerure" Kawaguchi #STDRUMS

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【MACBETH TO MORI 〜野外即興朗読シェイクスピア劇〜】を100倍楽しめるようになるブログ

投稿日:2021年9月23日 更新日:

河内大和、横井翔二郎、副田整歩、ユージ・レルレ・カワグチ。
この4人による野外即興朗読劇【MACBETH TO MORI】映像公開。
撮影・編集は丸山太郎。

ご視聴頂ければ分かる通り、本編とドキュメントを混ぜた構成となっている。
即興の面白さと難しさ・スリリングな瞬間・重なる偶然の記録である。
当ブログでは収録の顛末とストーリー解説を補足。
特に横文字が多く、400年以上前に作られた物語故に不思議展開もしばしば。
シェイクスピアはあらすじと台詞を把握している方が内容を理解できてオススメです。
動画をより一層楽しんでいただけるヒントと材料となれば幸い。
(ストーリー解説へのジャンプはこちら。)

2020年、12月2日。
大雑把な計画を持ち5人の男たちは東京から西北を目指していた。
車内BGMはのっけからChaosdragon Rising.
TERROR SQUADを敬愛する横井翔二郎の選盤である。
後部座席では既にメイクを半分仕上げた河内大和が台本をめくっている。

所定のコンビニエンスストアで忍さんと合流。
10年ほど前にセッションで知り合ったナイスガイ・ベーシストだ。
更に10分ほど車を走らせ、某集落へ到着。

忍さんの住居に一度荷物を置く。
ここからは先は4WD車でないと立ち入ることができない悪路。
機材と人間を、忍さん所有のジムニーへ積み込み目的地まで数往復。
本日の舞台『森』へ到着した。

東京都内で知り得る冬の印象を塗り替えるには充分な寒さである。
とはいえ暖かい時期は虫が湧いてしまい撮影にならないのではとの推察。
熊や猪が出る可能性も充分あり、万が一を想定しての進行。

我々は今日ここで、シェイクスピア『マクベス』の即興朗読劇を敢行する。

〜〜〜〜〜〜

2年前の冬。
自主企画【RICH FOREVER SEMINAR vol.7】開催。
そこに河内大和と横井翔二郎による即興リーディング・デュオ “Bi-syu” が出演。
演劇とドラムソロ #STDRUMS によるツーマンライヴ。
新機軸の共演で生まれた化学反応は今も記憶に新しい。

20191219 #STDRUMS + Bi-syu (河内大和×横井翔二郎) 〜RICH FOREVER SEMINAR vol.7〜 渋谷RUBY ROOM

近い再演を約束しながらも、世情がそうも許してくれない。
何かやれないかと話していたとき、河内大和から出た言葉が『森』だった。
森で、マクベスをやらないか。

2020年、11月。
私は『森』探しにロケーション・ハンティングへ向かった。
丸山さんもご同行いただけることとなった。
『森』がありそうで、気軽に向かえそうな沿線、小田急線へ。
ホルモンを食べに本厚木へしばしば来るため、この経路は慣れている。

秦野や伊勢原の公園・周辺地域を3か所ほど回った。
駅を降りて『森』がありそうな方角へ向けて歩き、周辺をよく調べてみる。
可能性を感じさせるポイントを数カ所見つけたが、足場や可動距離が合わない。

目的はあくまでも『森』。
(画像はイメージとして実際に河内さんから送られてきた画像)
ただ野外で広い敷地でもなく、廃墟など雰囲気がある屋内でもイメージと違う。
こうした少し特別な条件は、周辺近隣からの許可が必要な可能性を示唆していた。
さもないと、いっそ樹海クラスの奥深い地域へまで足を延ばす必要が出てきている。

引け際だ。
我々は鶴巻温泉の混雑っぷりに感嘆し、本厚木のサウナとホルモンを満喫。
この日、理想的な『森』には出逢うことは叶わなかった。

並行して、ロケーション募集を周囲に呼びかけていた。
すると忍さんから動画と写真で、彼が持つ物件周辺の様子を送ってくれた。
秩父にある村の敷地内に、使えそうな森がある。
『森』であり、小山の頂上のような開けた敷地。
手に入れた物件にDIYで音楽スタジオを作ろうとしているらしい。
貯水タンクのようなブルーシートに包まれた建物、バケツなどの道具も散見。
送ってもらった写真と動画を拝見する限り、理想の条件にも叶っている。
時間と日程を指定してくれれば近隣住民に掛け合ってくれるそうだ。

丸山監督を交えたメンバー内での相談結果、この森に賭けてみようとなった。
樹海に行っても撮影できない可能性より、心置きなく演技できる方がいい。
敷地使用における嘆願書を作成し、遂に我々は『森』へ漕ぎ着けることができた。

〜〜〜〜〜〜

基本は翔二郎と河内さん2人の役者が台本を片手に戯曲を進行させる。
通常謂われる『リーディング』との決定的な違いは身体の動きが加わるところ。
河内大和の “らしい部分” が詰まっている独特なリーディングスタイルだ。

リズムや効果音などの音響全般を私がドラムで担当。
この日は更にもう1名、サックス奏者の副田整歩が参加している。
リズムのみで経験して来た役者との即興に、メロディーでの合いの手が加わる。
晴れて劇伴でもなく・効果音だけでもない性格の演奏を可能にした。

陽が差し込む『森』のなか、撮影は難航を極めた。

まず寒さが身体の自由を奪い、思考とは別のファクターが演技を妨げる。
特にサックス本体そのものが冷えてしまい、手で持つことそのものが困難な状況。

そして、マクベスという戯曲を複数人で即興リーディングする難しさ。
練り込まず、突飛的でユニークな偶然の産物に出会えると我々は期待していた。
台詞による抑揚やテンションの加減を全員同じ流れのなかでキャッチする難しさ。
特に序盤は動きが少なく、内容を伝える場面が多いため慎重になってしまう。

熱量が保てないと承認せざるを得ない状況化での収録は苦痛に近い。
昼過ぎから始まった撮影も中断&やり直す回数が増えていた。
完全な即興を謳ったものの、このままではストーリーが回転しない。
一度作戦会議を開くために『森』を降りる。

シェイクスピア公演を60本以上経験している『S・マシーン』河内大和。
そして横井翔二郎とは “Bi-syu” にて既に呼吸を知り合っている仲。
彼が持って来ていた青写真とは大きく異なる結果となっていた。
シェイクスピアの壁の高さ、奥深さと面白さの真髄に触れられた瞬間である。

撮影は中止。
このまま撮影しても面白いものが撮れないという、最終判断だった。
自由である筈の『即興』にも例外があることを知れただけで充分な収穫。
その上で、後半からのシーンを改めて即興で取り組んでみることとなった。
夜の帳が下りれば『森』は別の表情を見せるに違いない。
使えなくとも記録とフィードバックとしての価値もあるだろう。

17時過ぎ。
辺りはすっかり暗くなり、一層冷え切った『森』へ再度の出航。
澄み通った空気。
吐く息がライトに照らされて幻想的な空間の演出を補助してくれる。
夜の森で演奏に合わせて大きな声を出すという行為で既に面白い。
いい予感だ。
この場にいる全員が近しい何かを感じていたのではなかろうか。

こうして後半シーンから、ワンカット30分。
一気に駆け抜けた。
役者の立ち回り、台詞回し、解釈、演奏、メロディー、タイミング。
完全即興、やり直しが効かないスリル。
とうとうやりたいことが現実化したような充足感があった。

話が進むごとに落とされていった台本の回収。
カメラ・機材の片付けを終えて忍さんの迎えを待つ間の、完全な闇。
自然の魅力に戦慄しつつ『森』を降りる。
一同近所の銭湯へ向かい、極上のお湯を嗜む。
喉の渇きを都内まで持ち帰り、焼肉ビールにて秩父温泉ツアーを完遂させたのであった。

〜〜〜〜〜〜

(物語冒頭の魔女たちの台詞でセッションを試している様子。)
こうして仕上がった約50分の映像は、序盤の難航を正直に伝える形となっている。
副音声を交えての進行も候補に挙がったが、内容とぶつかるのでNG。
ここで改めて配役を紹介する。

横井翔二郎:マクベス
河内大和:魔女・マクベス夫人・バンクォー・ダンカン・マルカム・マクダフ・老人・他
副田整歩:サックス・魔女・医者
ユージ・レルレ・カワグチ:ドラム・魔女・門番・老人

舞台はスコットランド。
ノルウェー軍との戦いで勝利を導いたスコットランド将軍、マクベス
戦友である将軍バンクォーと陣営へ戻る途中、荒野にて魔女と遭遇。
・マクベスはコーダーの領地が手に入る、いずれスコットランド王になる。
・バンクォーは子孫が王になる(王にはならないが王を生み出す)。

それぞれ予言を受けて魔女たちは消えてしまう。
早速その予言は的中、王ダンカンからの命令でマクベスはコーダーの領主となる。
信憑性が気になる手前、次に王位を継承するのは長男マルカムだとダンカンは宣言。
予言とは違う展開に動揺しつつ、マクベスの城にて晩餐会を開く運びとなった。

マクベスは事の顛末と心境を手紙に書いて夫人(妻)に手紙を送り、自分の城へ戻る。
予言がその通りになったこと、王になると言われたのにマルカムへ王位継承権が渡ったこと。
夫人はマクベスの王位継承の野心を鼓舞し、2人で王ダンカンを暗殺する計画を立てる。
しかしダンカンへの信頼と受けている恩寵が拭いきれず、決心が揺らぐマクベス。
夫人から洗脳に近いとも云える再度の煽りを受けて、遂に気持ちが固まる。
薬を盛られた酒を飲み、護衛も一緒に寝静まったダンカンの寝室に忍び込み暗殺
「マクベスは眠りを殺した」という呪い(幻聴)を聞き錯乱状態で夫人の元へ戻った。
犯人を捏造する計画(護衛の近くにナイフを置いておく)を忘れてしまい夫人が代行する。

翌日、迎えに来た貴族マクダフが寝室にて殺害現場を発見。
マクベスも入れ替わり現場へ向かい、怒りの余り護衛を殺害してしまう設定を実行。
犯人として疑われて当然の状況のなか、将軍バンクォーもまた魔女の予言を思い出す。
ダンカンの長男マルカムは身の危険を察知しイングランドへ逃亡する。
(→マクベスより殺害の嫌疑を捏造される。)

こうしてマクベスと夫人は玉座を手に入れた。
その日バンクォーとその息子フリーアンスは遠出し、夜は晩餐会の予定がある。
もう1つの予言を抹消するためにマクベスは2人に対して刺客を手配。
その間にもマクベス夫妻は掛けられた不眠の呪いに酷く憔悴している。

暗殺者からバンクォーの殺害を晩餐会の前に報告される。
息子フリーアンスの取り逃しに一抹の不安を覚えながら、晩餐会が始まる。
するとバンクォーの亡霊(幻覚)が見えてしまうマクベス。
客人を前に(他の人には見えていない)亡霊を振り払おうと取り乱してしまう。
晩餐会は中断。
精神的にギリギリとなってしまったマクベスは魔女へ再び会いに行くことを決意。
一方、貴族マクダフは王の招集にも関わらず晩餐会を欠席しイングランドはマルカムの元へ。
王マクベスへの信頼は即位する以前に揺らいでいたのであった。

ここまでが動画の前半。
一部収録できていない箇所もあるので少し細かくストーリーを書きました。
(この『ストーリーを伝える』作業が、MACBETH TO MORI では難しかった…!)
ここまで把握されていると、トークを挟んだ後半からが伝わりやすくなると思います。

〜動画後半〜 (※ここから演奏も含めて全てリハーサルなし・一発収録の完全即興)
3人の魔女が不気味な儀式をしている場面にマクベスが立ち入る。
マクベスの懇願により魔女たちは幻影を用いて再び予言を言い渡す。
①:マクダフに用心しろ。
②:女から生まれた者は誰一人マクベスを倒せやしない。
③:バーナムの大森林が動いて城へ攻めて来ない限りマクベスは敗れない。

即ち、マクベスが負けることはあり得ない。
しかし最初の予言「フリーアンスが王になるかどうか」の質問には答えない魔女。
代わりの答えとなったのは8つのバンクォーの亡霊を見せること。
マクベスは貴族マクダフ不在の領地ファイフへ奇襲を仕掛けるのであった。

気が狂ったマクベス軍に家族を殺害された貴族マクダフは激昂。
マルカムと共にイングランド軍の援軍を得てスコットランド襲撃の結託をする。
一方マクベス側は、夫人も幻影に取り憑かれてしまい夢遊病のような状態。
不敗の予言を唯一の頼みの綱にしているが、陣営は既に憔悴し切っている。

マクダフ・マルカムはイングランドから北はバーナムの森へ進行中。
「森の木の枝を切り取って、掲げて進むことで兵力を大きく見せよう」と提案。
はい、そういうことです。

マクベス夫人はとうとう気が狂ってしまい死亡。
そのとき、使者から「バーナムの森が動き出した」と報告を受ける。
とうとう予言が現実となり、自らの出陣を決意する。
対峙したマクベスとマクダフ。
「女から生まれた者には負けない」残っている最後の予言(魔力)。
これに対しマクダフは帝王切開で腹から出てきた(≠生まれていない)のであった。
エー!
こうしてマクベス軍は殲滅。
晴れてダンカンの宣言通り、マルカムが新たなる王として即位するのであった。

〜〜〜〜〜〜〜

シェイクスピアはまず、人名と人間関係を整理すると物語を理解し易い。
グラームス&コーダーはマクベスの領地で、ときに地名で呼ぶこともあるので要注意。

3人の魔女が、マクベスを中心とした世界で遊ぶという構成。
横井翔二郎を他3人の役者(=登場人物全員)が引っ掻き回していると見るとわかりやすいです。
河内さんの限界突破な早変わりも見どころの1つ。
整歩さんの医者が最高なんだよな…。

台詞には対局を示す言葉(例:酷いのかいいのか)が頻繁に登場する。
これはあり得ないことを言い始めている→既に魔女の術に嵌っている証拠。
気付けば夢のなかに入っており、気付かぬうちに夢を過ごしている。
人は劇中に生きているというシェイクスピアの言葉を表しているそうだ。

いずれは王になると予言されたマクベス。
殺害の決心は本人自身ではなく夫人の後押しにあり、彼女もまた魔女の1人。
この2人も常に対照(対局)的であり、ストーリーが進行するにつれて立場が逆転する。
これはお互いを埋め合う補填関係として、2人の相性と愛を描いている。
夫人が亡くなった直後の、マクベスの紡ぎ出すような台詞は何度聞いてもカッコいい。
マクベス夫婦は命尽き果てようとも、地獄の晩餐会で愉快に踊り続けている…。

森が動き出す物語を『森』で演じるのは、若干危険な “賭け” だ。
ジムニーのヘッドライトは、その場の発想を前向き(リアル)に導いてくれた。
森が攻めて来なければ大丈夫→なるんかーい。の、ベタ展開を正直に支えてくれた。

以上、随分と長くなってしまった【MACBETH TO MORI】の解説でした。
スーツケースドラムでの野外演奏。
シンバルを1枚持ってくればもっと表現の可能性が広まったと若干後悔しつつ。
有りモノでやるからこそ生まれる緊張感がありました。

リーディングという形態に沿っているため、音声のみで楽しむのもオススメ。
実は声や楽器の音バランス・パンディングにも繊細な調整がされています。
木々や枯れ木を踏む音など、『森』ならではの乾いた質感をお楽しみください。
この4人が今後どのような展開を見せて行くかも、乞うご期待。

それでは、続きはwebで。チーン。

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