METAL TRASHING FIT II

by Yuji "Rerure" Kawaguchi #STDRUMS

Daily

THREE DAYS IMPRESSION: “District NONMALT 3” 〜東京を憂う夜編 20211210〜

投稿日:2021年12月11日 更新日:

〜前回の続き〜
KING CRIMSON 来日公演と、NODA・MAP 番外公演 “THE BEE” を立て続けに体験。
鋭く仕上がった感受性を以ってして、3日間に渡るイベント初日を迎えた。

12月10日
青山月見ル君想フ

NONMALT
タテタカコ
DJ #UkORIGINAL

年末へ向けて刻一刻と針は進み、作曲と制作を繰り返す日々を送っていた。
棚で眠っていたdisk unionのレコードバッグを掃除してネタを詰め込む。
高校生の頃に買ったバッグがいまこうして役に立つとは。

“RICH FOREVER TRADITION 2021” フライヤーも用意周到。
少し早めの会場入りを目指したかったものの、月見ル君想フへの到着は16時過ぎ。

ちょうど機材の転換中。
タテタカコさんは既にサウンドチェックを終えていてご挨拶。
大阪は火影にて(ほぼ)毎年クリスマスワンマンライヴを行われているタテさん。
そのフライヤーデザインを #STDRUMS でもお馴染み Yonarte Tattoo が担っている。
旭川の友人たちとも交流があったり、繋がりが見えて嬉しい。
NONMALT のサウンドチェックを終えて、私は…?

そう、今日はドラマーとしての仕事はない。
DJ #UkORIGINAL として、フロアを燃やすべくライヴハウスへやってきたのである。
友人たちと集まって好きな盤を流したりした経験はあるが、役割としてのDJは初めて。
さきに書いた旭川(10月)でのライヴ後に好きに遊ばせてもらった数時間の経験を頼る。

まず、DJは通常ヘッドホンを持ってくるべき。
針持ってきてヘッドホン持たず。
会場にフルのDJキットが揃っているのは、イマ現代では通俗なのであろうか。
CDJは使わないため、置き台を反転させればジャケットを飾れるスペースに早変わり。
ハッシュタグを表記した紙に “i” を1つ書き忘れて準備完了。
開場まで時間があるので、Brian Eno だの Beatles だのをまったり回していた。
これはMONO針の動作確認も込みだったが、片方のスピーカーしか音が出ない仕様が裏目に出る。

“District NONMALT 3”
元々は今年3月の開催予定であったが、2回の延期を経てとうとう本日。
入場時のドリンクチャージをも排した文字通り完全無料のライブイベントとして構築。
音楽に導かれる人々の「興味 = 知的欲求」に応答するという試み。

海外の音楽会場の多くは入場料が設定されておらず、飲食代の延長線にライヴがある。
(飲み屋の一部にステージが設営されており、所謂『ライヴハウス』とは根本的に別物。)
人々が音楽を聴きに行きたいとする欲求のハードルを下げ、新しい可能性をもたらす。
だがここ日本では家賃や敏感な騒音への反応などから「入場無料」は経営的にも難しい。
本イベントは運営資金をクラウドファンディングで調達。
『フラッと寄れば新しい音楽と出会える』1つの理想形を具現化したアツい1日だ。
“RICH FOREVER SEMINAR” も、基本的な方針は同じ。
アメリカでの活動経験を持ったドラマー ウエダの理想像は首が取れるくらい頷ける。

開場〜開演の1時間は思い付くままに選盤してのDJ進行。
時折食い付いてくれる人が現れるとき、狙い通りの曲が流れていたり。
人と喋っていたら曲が終わってしまう辺り初心者丸出しである。
足元にあった Thin Lizzy を乗せ、A4に勘で針を乗せたらオンタイムで曲が始まった。
この辺り、普段からレコードを聴き続けていた甲斐があるというものだ。
途中お店が用意してくれた針の異常に気づき、自前のものと交換。
開演前のMONO針動作確認では、左チャンネルまで確認ができていなかった。

YES のフェードアウトから NONMALT は1番手。
このイベントを開催するバンドの音は言うまでもなく実直。
音楽への愛情と理想をピュアに具現化したシリアスな音像は都会の喧騒を彷彿とさせる。
会場の鳴りとウエダテツヤのドラミングはいい呼吸(セッション)を交わしていて楽しそう。
ベース リンちゃんの不意な展開を導き出すフレーズが印象的であった。

転換の15分は片面丸々1曲のなにかを流そうと決めていた。
いくつか選択肢があるなかで、タテさんへ相談。
敢えて「なんじゃこりゃ!?」という音を選びたいと了承を得る。
こうして Poly Rythomo が今日も新しい刺激となるのであった。
ご来場していた大西英雄さんは予想通りの反応。
ドラマー・リズムに興味がある人ならこの音に反応しないわけがない。

後手 タテタカコ は、登場から特別な雰囲気を観に纏っている。
言語化するのであれば『全くガードがない人間』がステージに居る感覚。
客席にお辞儀をし、ステージへお辞儀をし、ピアノの前に座れば心を見透かされる。
「汝が久しく深淵を見入るとき、深淵もまた汝を見入るのである。」
こういった言葉があるように、自然とこちらもノーガードとなり、言葉と音を直接喰らう。

伴奏しながらイベントのご挨拶・エアコン調整希望の即興もなんのその。
ここまで演奏も凄まじいシンガーソングライターのソロライヴは初めて体験した。
乗り込みPAさんの仕事も完璧で、ソロでありながら2人でライヴを組み立てている印象。
最後の曲が終わると同時にさっさと袖へ戻ってしまう所作も完璧。

欲望渦巻く土地を離れて、心安らぐ土地でじっくり音楽と向き合う価値は何度と試算した。
疑うことに慣れてしまっていた東京での日常を見つめ直す。
しかし東京・赤坂に居たからこそ今日のライヴを体験できているのもまた事実。

はじめ、タテさんの終わりに用意していたのは David Bowie だった。
EPIC に大団円を決め込もうと企んでいたのだが、間際になり急遽変更。
太郎くんとのアンコール後、Chemical Brothers の乾いたスネアが会場に響いた。
空気を追うのも、入れ替えるのもコントロール次第。
なるほど、間違いない曲順を用意しておけばいいのではなく、DJもライヴである。
こうして終演後からテクノパーティーとなり、青山の夜を締めくくった。

完全に入場無料でここまでのライヴを体験できた人々は幸せなことだろう。
イベントの趣旨としても非常に正しい結果を育んだように感じている。
願わくば、こういった建設的イベントがもっと気軽に打てる世の中になりますよう。

身体を動かした実感が企画を終えたにも関わらず無いのも初めての感覚。
DJ でのお誘いをありがとう御座いました。
偶然重なる盤に新たな気付きもあり、フィードバックも盛り沢山。
Ginger Baker と Ashra Temple を混ぜて流すようなDJをご希望の方はご連絡ください。
全てオリジナル盤にて乗り込みいたします。

撃ち抜かれた身体を引き摺り帰宅。
割と飲んだようだが、高ぶった気持ちは身体を作業机の前へ動かした。
音楽へ、もっと素直に、もっと大胆に。
現体現を目の当たりにした私の心は、ふつふつと燃焼していたのである…。
続く。
(一部お写真をSNSから拝借しております。)

RICH FOREVER TRADITION 2021 開催決定!#STDRUMS + Bi-syu (河内大和×横井翔二郎) ドラムソロ×即興朗読ツーマンライヴ

それでは、続きはwebで。チーン。

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