METAL TRASHING FIT II

by Yuji "Rerure" Kawaguchi #STDRUMS

#stdrums Daily

#STDRUMS【完全アナログレコーディング & UK製造レコードアルバム】製作日記 〜地下倉庫レコーディング編〜

投稿日:2019年2月10日 更新日:

というわけで
【完全アナログレコーディング & UK製造レコードアルバム】
クラウドファンディングプロジェクトのレコーディングを
1月13日〜17日の5日間で行ってきました。

場所は藤沢にある某地下倉庫。
家から通うのはやや遠いため
オーナーへ相談して事務所にて寝泊まりさせていただくことに。
合宿的な要素も孕んだレコーディングの始まりです。

初日(1月13日)

午前中からドラムセット一式・生活用品・寝袋などを積んで藤沢へ。
移動は我らがHERE武田神にご協力いただきました。ありがたや…。

業務用スーパーにて食材の調達。
鶏肉4kgに米5kgもあれば大丈夫でしょう。

一式を搬入して早速セッティング。
何度来ても強烈な空間です。
気持ちはまだまだ余裕がありますが先を見越し、まったりはしてられぬ。

隣にある部屋にコントロールルームを設営。
このレコーディングは、スタジオをイチから作るようなもの。

↑同じ環境で録音したFUSION PUNK MACHINEはパソコンを用いたデジタルレコーディング。
今回はテープでのアナログレコーディング。
エンジニア福島氏もパソコンを完全に使わないピュアなテープレコーディングは初めてとのこと。
どんなハプニングが待っているのやら…。
…どうやら既に『前夜祭』があったらしく
前日に動作チェックをしていたところ、急遽部品の不備が現れてしまったのだとか。
友人づてを頼りなんとか解消して今日に至っているとのこと。

お昼からセッティング。マイキングと経て17時頃からいよいよ音出し。
…早速なにか不具合が発生。
テープを引っ掛ける部品が外れてしまったため、六画レンチで補正。
しかし、なにか不安定な要素があるらしい。
使用するレコーダ−は16チャンネルのマルチトラック。”FOSTEX E16″
当時の位置づけとしては民生機ですが
24トラックのプロ機を倉庫に持ち運ぶのは不可能に近い。

(24トラックのプロ機代表例。重さは数百キロ!)
ハーフインチ(2.54mmの半分)のテープに、16個の音を同時に録音するという
かなり繊細な機器です。
試行錯誤を繰り返すも、どうも様子がよろしくない。
回転するテープの端っこが引っ掛かる感じも怖い。
テープを手に入れるのも一苦労なので、傷付いたり使えなくなるのは避けたいところ。
早速困った我々…そこでDEEPCOUNTレコーディングで御用達
吉祥寺はGOKスタジオへ修理調整・及び機材レンタルの相談をしてみることに。

(ヘッド部分を掃除する福島エンジニア)
オーナー/エンジニア近藤さんへ状況を説明すると
電話越しなのにまるで目の前に機材があるかのよう。
FF3のプログラミングバグを通話上で修正したという
伝説のエンジニア・ナーシャジベリのようだ…。
・ヘッド部品の汚れを爪楊枝で削って掃除する。
・無水アルコールを使用。水は厳禁。
・10分に1度の頻度でヘッドは掃除する。
これらのアドバイスをいただき調整していくと…徐々に音が戻ってきた!すげぇ。
なお上記した『回転するテープの端っこが引っ掛かる感じ』に対しては
『それは気にしなくていいですよ〜』とのこと。マジか。
これぞアナログだ…。

結論からいうと今回GOK近藤さんに多大なるご協力をいただきました。
伝道師ともいえる知識と経験を持つGOK近藤さんのインタビュー記事はこちらから
https://www.studioasp.com/pickup/3062_goksound.html

一旦休憩。合宿メシは得意の無限鍋。
同じ釜の飯ってやつです。
キッチンも充実しているため自炊には困らなそう。
ありがたいサポートです。

引き続きレコーダーの掃除・調整を経て、ようやく23時頃から録音スタート。
倉庫に来てから大凡半日かかりました。
余談ですが1969年の1月13日、KING CRIMSONは初めてのリハーサルを開始したそうです。
50年前のこの日、彼らはどんなハプニングを迎えていたでしょうか。はてさて。
16チャンネルは使用不可となり、合計15個の音で録っていきます。
流石に疲れも出てきていて、25時頃。KCの半分ほどを録音して初日終了。
セッティングしっぱなしにできるので、加重を考えタムは外しておく。

オーナーのご好意もあり一杯頂いて、就寝…。
いや、なんだか楽しくなってきたぞ…。
深夜に真っ暗な倉庫でもうちょい遊ぶ。
この時間が録音予定の1曲に影響するとは想像もしていなかった。
こうして前途多難の初日が終了。
(エンジニア福島氏は家がさほど遠くないので帰宅しております)
残り4日で10.5曲。
__________

2日目(1月14日)

10時に起床。
目覚めて地下に行けばもうドラムが叩けるという絶好の環境。
こいつは最高だな…。

機材も整い、あとは録音していくだけ。
昨夜見切って早めに切り上げた効果もあってか、順調に録音が進んでいく。

■デジタル(パソコン)と
●アナログ(テープ)。
音質以外で最も違う点は作業の進行方法にあります。
現在主流のデジタルレコーディングは、パソコンのソフトを用いて録音していきます。
言わば僕らが今回並べ揃えている機材たちが全てパソコン内にあるようなものです。
またデジタル処理のため、これまでの録音データをハードディスクに溜め込んだり
それらの音を細かく切り貼りしてといった高度な編集作業ができます。
極端な話【叩いて→止めて】を繰り返し
1小節ずつドラムを録音していくこともできるのです。

一方テープ。録音先の「ハードディスク」はこのテープのみです。
録り貯められないため、例えば『3つ目前と今回どっちがいいか』などできません。
やり直す場合は、やり直すのみ。
更に同時に録れる音の数にも制限があります。僕らが使っているのは16チャンネル。
しかも1つ使用不可で15。ドラムの音で基本9マイク。メトロノームに1チャンネル。
残りの5チャンネルに、作曲した曲データを入れます。
例えば昨今、ギターとベースだけで5だの6だの使うのがザラなので
チャンネル数が多い曲は、事前にパソコンの方でデータを纏めてテープに取り込みます。

途中から録りたくとも前後の演奏と録音が被ってしまうため、基本的に一発録り。
(初日に曲の半分を録って終えられたのは演奏の前後に大きな隙間があったため)
また録音内容を聴くためには毎回テープを巻き戻して再生する行程が必要となります。
簡単に言えば、1つ1つの作業にいちいち手間と時間が掛かるわけです。
上記した「曲データをテープに取り込む」というのも意外と大変です。
『なんでそんなことしてんねん…』という満場一致の質問に関してはまた改めて…。

この日はクラウドファンディングの【レコーディング参加権】でお集まり頂いた皆さんと過ごす。
見るだけではなく【参加】。どういったものになるかはお楽しみに…。

21時頃に夕食。今日も今日とて鍋。
24時頃に本日分の完了。
KC、SHIMON、OGATAを録り終える。
また、昨日深夜の奇行録音を福島エンジニアに聴いてもらいOKを貰ったので
嬉しい副産物。SHINも完了。

オーナーとビール。
銭湯へ向かうため運んできたチャリに乗って2駅隣まで…
…東京の2駅分とは訳が違う…。
坂・坂・坂
闇・闇・闇
1月の寒空。
帰ってくればカゴに掛けたタオルは凍り
ワタシは汗だくになっていましたとさ。
残り3日で7曲。
__________

3日目(1月15日)

11時起床。
卵を入れて雑炊。

なにやらバタついている。
我らがFOXTEX “GOOD BOY” E16。15チャンネルも不安定になってきたとのこと。
16が故障しているので、隣の15も不安定になる。ということなのだそうです。
これ以上チャンネルを減らすわけにもいかず、万事休す。
イイコイイコとおだてて育ててきたがダメだったか…。
再び吉祥寺GOKスタジオへ問い合わせて、改めてレコーダーをお借りする運びとなりました。

取りに行って下さっている間に僕は曲の練習。
早く録れれば時間は巻ける。プレイヤーの腕次第とは原点にして結論。

こうしてはるばる吉祥寺GOKからE16の旧機種”B16″が来訪。
何はともあれプロの手によってメンテナンスされている安心感は精神的にも大きい。
現実面のタイムテーブルを組み直しつつ、録っていきます。
因みに調整された機器でも、テープの末端である16チャンネルは通常録音には使わないようです。
引き続き計15チャンネルでの作業。

24時頃に本日の録音終了。
ASANO、COREを録り終える。
夕飯は言うまでもなく鍋。
写真が無いあたりこのときの精神的な追い込みを感じる…笑。
残り2日で5曲。
__________

4日目(1月16日)

10時に起床。早速朝練。
そろそろ体力面も気を使っていきたいところ。
流石にお互い作業にも慣れ始めてきている。
機材への不安が払拭されたのも大きい。始まってしまえばこちらのもの。

テープの交換などあり15時頃に一旦休憩。

夕食はダシを使ったラーメン。ゆで卵が美味い。

25時頃に完了。最も録音に集中して時間を使えた1日となりました。
TORIKI、S、JAVIを録り終える。
毎回同じ写真に見えますが、ペダル・スネア・ミュートの具合が全曲微妙に違います。
例えばこの2枚では、シンバルの並び順が変更されていたり。
勿論音の面ではチューニングも。
明日最終日で残り2曲。
__________

5日目(1月17日)

最終日。8時に起床。
あの険しいオデッセイ・ロードを自転車で越えるパワーも無く
ならばと朝から電車で銭湯へ向かう。22時間営業という形態なら問題無し。
…その閉まっている2時間(8時閉店〜10時開店)に当たるとは…。
調べずに直接現地へ向かってしまうという
いよいよ脳みそまでもアナログ化しているようです。
駅近くの漫画喫茶でシャワーを借りる様は家出少女そのもの。

今日、この日までになるべく録音を済ませておきたかったのには理由があります。
12時前にDEEPCOUNTのメンバーが到着。

こちらも福島さん(ドラマー)自前のLudwigキット。
倉庫ではなく上のホールでの録音。

(録音していく上でのメモ書きと、吸音材を敷いての録音)

ギター・トランペット。そして裏ワザ2発(!)を経て録音完了。
遠路はるばるありがとう御座いました!
しかしメンバー全員ほぼ一発録り…。流石としか言えません…。
時間は19時頃。

最終日は照り焼きステーキ。パワー付けていきます。
22時頃から最後の曲であり最大の難関である”LEVEE”録音スタート。

演奏の試行錯誤を繰り返し、27時前。LEVEE録音完了。
難関と予測していた曲、やはり5時間程掛かりました。
こうして #STDRUMS アナログレコーディング全曲完遂。
この頃には福島エンジニアのテープ操作もすっかりプロ級に…。

(本来予定していたタイムテーブル。最終日は片付けの余裕を組んでいました)
感慨に浸りつつ、片付けはほどほどに。

Slointe!

1月18日

10時に起きて鍋の処理。

片付け。踏み過ぎてペダルの型ができていました。
こうしてドラム機材は一旦纏めて後日回収に。
福島エンジニアと吉祥寺GOKスタジオへ向かいレコーダーを返却。
渋滞も重なってしまい、家に到着したタイミングで機材車と合流。
必要な機材を乗っけてもらい、僕は一旦家でシャワーなりなんなり。
5日振りの我が家を満喫できる間もなく、荷物を持って渋谷へ。

続きはこちらから

20190118 HERE + Outside Dandy + The Pinballs 〜ROCK’N’ROLL MUSIC SHOW東京編〜 渋谷O-CREST公演

ハプニング・トラブル・メンタル的には地獄のような
日々ドラム漬けという天国のような
まさにこの空間通り、異次元の5日間を終えました。

何故ここまでアナログレコーディングに拘ったか。
最大の理由はレコードを製造することとの関連。(後日書きます)

そして、拘った甲斐と結果がこのレコーディング中に現れました。
地下倉庫という超特殊空間でテープに収録されたドラムサウンド。
聴いたときの、音の『限界の無さ』たるや。
さきに紹介したGOK近藤さんのインタビュー記事から言葉を拝借すれば
『純粋な塩である化学式【NaCl】と
マグネシウムなどの不純物を含んだ【海の塩】と
舐めたときに果たしてどちらが美味しいか』
まさに、不純物と余裕に満ちた、窮屈さがないのびのびとしたサウンド。
こんな生々しいドラミングはこれまで自身のキャリアで聴いたことがありません。
誰がどう聴いても『唯一無二』と言える凄まじい作品となりました。
我々が得られた経験値も計り知れない…。

テープはミックス作業を経てUKへ送られます。
次回
【製作日記 〜アナログミックス作業編〜】
乞うご期待!

地下倉庫オーナー・福島エンジニア・武田神・DEEPCOUNTの皆さま
クラウドファンディングからの参加の皆さま・そして応援して下さっている皆さま
ありがとう御座いました!

それでは、続きはwebで。チーン。

2月16日(土) 渋谷RUBY ROOM
〜RICH FOREVER SEMINAR Vol.4〜

#STDRUMS
是巨人
明日の叙景
Monoral Zombie

【SWITCH STAGE THEME】
黄猿

-OPEN 18:00 / START 18:30
-ADV ¥2000 / DOOR ¥2500

※出演アーティスト収録オムニバスCDを全員にプレゼント!(非売品)
チケット予約はコチラから

ドラムレッスン受講生随時募集中!
あの曲を叩けるようになりたい。ドラムを叩いてストレス発散してみたい…
未経験・初心者の方大歓迎!
経験者の方にはお悩み相談、基礎・ルーディメンツから
ツーバスやブラストビートといった専門的な演奏方法まで幅広くお応えいたします。

新宿HILL VALLEY STUDIOにて1時間4000円。スタジオ使用料込みです!
僕の愛器を並べてドラムキット2台でレッスンできます。
まずは無料体験レッスンからどうぞ!
⬇⬇⬇詳しくは⬇⬇⬇
https://www.rerure.com/lessons.php

-#stdrums, Daily
-, ,

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

【極度北海道編】#STDRUMS & ZURITO “RICH FOREVER JAPAN TOUR 2023″

ZURITO とのツアーは、まさにそういった中身(音楽表現)以外のハプニングが連続し、楽しい記憶だけではなく、どちらかと言えば苦労が絶えない…ようやく余裕が現れたとき、ツアーは終盤に差し掛かっていた。

20190323 Sendai to Hokkaido…【バンドマンは工場見学へ行くべき!】〜HEREワンコインワンマンツアー日記〜

仙台FLYING SONでライヴを終えて宿にて起床。 若干の二日酔い。 まずは銭湯。 近くの場所を既にリサーチしているのは流石HERE御一行。 熱いサウナ・冷たい水風呂。 これぞ地方特権。ナイスお湯で …

20220314:スペアリブと鯖と水菜と確定申告。

3月14日。 先日作って大変美味しかったスペアリブの煮込みを再び仕込む。下準備にもそれぞれ流派があるようだがウチではシンプルにアクを取ってじっくり煮る。圧力鍋が無いので、味を付けたら火入れ→冷ますを数 …

【RICH FOREVER JAPAN tour 2017】4月22日 渋谷RUBY ROOMに向けて

昨夜でツアーに向けての路上ライヴも一旦終了。 本日、いよいよロンドンからUNDERGROOVELANDのメンバーがやってきます。 日本に彼らが来てからは確実にドタバタするでしょうし ここでツアー初日に …

ロバートフリップ風日記⑧『カクシンハンPOCKET05 夏の夜の夢』千穐楽

2017年3月26日(日) (この日も自宅から始まる) 8:10 起床。 8:25 シャワー。 8:40 炊飯。 9:00 朝食。塩豚炒め。ワラサのあら味噌汁。 9:20 移動。 10:00 到着。シ …

Archives