METAL TRASHING FIT II

by Yuji "Rerure" Kawaguchi #STDRUMS

#stdrums

20191219 #STDRUMS + Bi-syu (河内大和×横井翔二郎) 〜RICH FOREVER SEMINAR vol.7〜 渋谷RUBY ROOM

投稿日:2019年12月28日 更新日:

「これでなんとかなった…!」
水曜日はとっくに通り過ぎて朝日が昇っていた。
ほぼ仮眠という形で二度目の木曜日を迎える。
荷造りは事前に済ませておいた。
時間ギリギリまで眠るため、自炊好きの私もこの時ばかりはコンビニに頼る。
手軽という対価を払うには充分すぎる。ありがとうコンビニ。

12時に渋谷RUBY ROOMへ到着。
そこには河内大和氏と
数時間前に顔を合わせていた横井翔二郎の姿があった。

——
12月18日、水曜日。
夕方にリハを終えて少しお茶を交わし帰宅。
特典音源の盤面を印刷する仕事が待っている。
入場者全員プレゼントのCD。
インク作業は一気に終わらせた方が効率がよい。
最終的な入場者数は最後までわからないため、前日の作業がこれまでの常であった。

既に印刷用の版は作ってあり、いつも通りの工程をいつも通りにこなした。
帰って刷るだけだ。枚数が普段より少し多いくらいで、難しいことはない。

今日は22時から共演のBi-syuとの打ち合わせがある。
前日のここしか合わせられるタイミングがなく
私がいる必要はないが、企画者として/興味として同席する。

20時ごろに帰宅し、早速仕事に取り掛かる。
1枚印刷。問題ない。いい出来だ。
2枚目。これもいい。
3枚目。嫌な予感がする。
4枚目。型が目詰まりを起こし始め、印刷がかすれてしまうようになってしまった。
そんなに珍しいことではない。
この版の使用を諦め、もう一度作ればいいだけだ。
振り返れば安直に作り直す選択を取ったのも失敗の要因と言えるであろう。

再び『刷れない版』を生成してしまった。
これには参った。
廃盤の機械を使っているため、部品がすぐには手に入らない。
試行錯誤できるのはあと1回。
時間はすっかり22時前。
ひとまず打ち合わせへ行くことはほぼ絶望的であることを伝える。
版は作り直す以外の選択肢がないため、慎重に作業をおこなった。

こうして三度目の製版。淡い期待も虚しく失敗に終わった。
あとに調べると気温なども影響するという。
コスト面や製作への痛手もあるが、窮地に立たされている。
イベントは明日に迫っている。
私が咄嗟に思い付いた解決策は、出演者3人のサイン入りディスクだった。
写真の印刷版は当たりとして封入する。

幸い2人が同じ場所にいるため、電話で確認しOKをもらった。
だがこれは明日もかなりバタつく1日になるであろう。
ソロでの企画は、当日いかに冷静であり続けられるかが鍵となる。
少なくとも自分のサインは入れておかなければ…。

と、作業をし始めると1本の電話がかかってきた。
明日に出演する盟友からである。
打ち合わせが終わり、公演内容も決まったとのこと。
前向きな話題が力を与えてくれる。
明日の流れをざっくり伝え、集合時間を早くするなど提案をした。
「それなら今から行ってサイン書きましょうか?」
思いもよらない、だが最も理想的な答えが返ってきたのだ。

24時過ぎに盟友はやってきてくれた。
サインに使うペンと、お茶菓子まで持ってきて。
失望に包まれていた空間に一筋の光が差し込む。
相も変わらずKING CRIMSONの話をしながら黙々と作業し
26時頃に終了。食事をして解散。
現場での作業工程が圧倒的に減るのは勿論、
この時間こそ、不安に包まれていた私を救い上げてくれたのであった。

諦めていた新曲の準備を急ピッチで始める。
全体の音バランスを揃えてセットリストを組む。
書き出している間に物販などの荷造り。
入場者の予約名をリスト化し、フライヤーの準備を終えて朝6時頃。
「これでなんとかなった…!」

——
会場に入り各位置決めから始まる。
楽器が極力少ない本公演。
普段席として使用される踊り場のような場所を役者の舞台とし
本来のステージはお客さんに上がってもらえる作りにした。
ドラムは通例通りフロアへセッティング。

二人は読み合わせを軽くしながらグルーヴの確認をしている。
『いわゆるただのリーディングは面白くない』という河内大和氏の提案で
即興でBGMを私がつけていくことになった。
一瞬も休まる時間がないという意味だ。受けて立とう。
因みに私はipodを持っているが、itunesなどのサブスクサービスは使用しておらず
常に持ち歩いている数十枚のアルバムから選曲していく。

昨夜2人分のサインは書き終えているため、残りは河内さんのみ。
スタッフとして来てくれた小田伸泰氏も黙々と梱包作業を手伝ってくれる。
ダブルネームTシャツは13時頃に到着。枚数を数えてテーブルへ並べる。
全てが紙一重で、しかし着々と準備は進んでいった…!

【RICH FOREVER SEMINAR vlo.7】
夜公演は数時間でチケットが即完売したため、急遽追加公演の【7tq】を用意。
木曜日の昼間からというのに多くのオーディエンスが集まってくれた。

開演時間となり役者二人を呼び込む。
この日のために結成されたリーディングユニット【Bi-syu】
我々3人は3年前のカクシンハン公演『ジュリアス・シーザー』で出会った。
今こうして、このような形で共演するとあのときは誰も想像し得なかったであろう。
奇しくも小田氏も同公演での初共演であった。

星新一さんの短編『すばらしい天体』を読み始め、PINK FLOYDのEchoesを流す。
渋谷の一角が宇宙船となり、ふわりと浮き始めた。
全く想像できていなかったこの瞬間は、やはり想定を遥かに超えるものだった。
来る間に買ってきたおにぎりを隙を見て胃袋へ放り込む。

「とびきりロマンチックなやつ流して」
と言われて Keith Jarrettの “The Melody At Night, With You” から I Loves You Porgy。
偶然の分かち合い・産まれてしまった奇跡こそ即興の醍醐味であるが
『愛の鍵』の美しさと狂おしいほどのシンパシーが生まれ、呆然としてしまった。
まさに奇跡。あの初演を聴けた人は本当にラッキーだったろう。

『殉教』ではLarks’ Tongues In Aspic part.2で始めるやや重い展開。
中間で色々展開を挟みつつ、オチを予測してStarlessで終わらせたのはアツかった。
同時にKING CRIMSONは曲の意味が強すぎるとも感じたり。
こうしてBi-syuの初演を終えた。

昨夜から通じて、既に体力の限界が来ている。
今から自分の演奏があるなんてにわかには信じられなかったが
やる気に満ち溢れていたのはBi-syuの演奏に心踊らされたからに他ならない。

11月の平沢進+会人(EJIN) BATTLESツアーで得たインスピレーション。
『何故ソロ活動なのか』という自問自答。価値観を総リセットし
この日に向けて新曲の準備を始めていた。
版が機能せず、大幅な時間ロスから準備が間に合わなくなり
新曲の披露を諦め、これまでと同じセットリストで向かおうとしていた。
しかし助けの手を差し伸べてくれた友人のお陰で、間に合わせられることができた。
演奏が始まった瞬間「本当にやってよかった」ああ、本当にやってよかった。
イメージとフィードバックが交錯し、次なる扉に手を掛ける。
前向きなエネルギー。活き活きとした演奏。充足した1時間。

追加公演を終え、食事を挟みつつ次のステージを想像する。
役者二人は休憩と集中の狭間にいるようだ。
セッティングなど準備は整っているため思った以上に余裕があったのが幸い。
盤面へのサインも全て終了。
小田氏は夜も受け付けを引き受けてくれることになった。
エンジニア福島氏もスタッフとして来てくれて物販担当。
強力な仲間のお陰でRFSは成り立っている。

チケットソールドアウトの夜公演。
プリントチケットを持って入場してくれるのが嬉しい。
昼に引き続き、Bi-syuのステージでは即興BGMを担当。
冒険はし過ぎず、少し勝手もわかってきたので遊び始める。
『西部に生きる男』は展開が激しいためアップ目の曲をコロコロと変えていく。
『霧の星で』では文字通り「霧に包まれている」ような音のリクエスト。
ipodを探ってみるとヌメっとした音楽はあまり入っていないことが判明。
Ashra – Ocean Of Tendernessを選択したくなかったのは
実は偶然にも開演直前に既に流れていたからである。
最後は再び『愛の鍵』知ってしまっているので同じKeith Jarrettで別の選曲。
終わった直後に閃いた…COLDPLAYだ…!
1stの曲をエンディングに重ねていたら気絶していたかもしれん。(私が)
即興リーディング&BGMトリオ”Bi-syu”はこれにて終演。

あとは叩き尽くすだけ。
ここまで来てしまえば意外と余裕。
疲労で考える力がなく、リラックスさえも呼び込んでくれている。
盛り込んだ新曲群も一度演奏した後なので早速アレンジが効く。
10分以上の長い曲は今年ロンドンでレコーディングしたもの。
“SHINE-MON”を作曲してくれたSHIMON HOSHINOとのコラボ第二弾。
音源とは全く違う印象をライヴで魅せてくれる、これからも非常に楽しみな曲だ。

こうして1日2公演に及んだ ”RICH FOREVER SEMINAR vol.7”
恐らくライヴハウスが初めてというオーディエンスの方も多く見受けられたが
トラブル1つもなく、また非常にマナーもよく運営側として助かることばかり。
『素晴らしいイベントは素晴らしいオーディエンスによって作られる』
信じていた指針は正しく、証明して下さった1人1人に感謝と賛辞を捧げます。

演劇と音楽ライヴ…いわゆる異文化であるこの2つですが
違う言語でも「ありがとう」という気持ちが心に宿っているように
そこにはただ2つの『表現』がありました。
エンターテイメントは型に捉われない。だからアートなのだ。
遂に実現した音楽以外での『対バン』は大成功を収めたのでした。
河内さん、翔二郎、小田さん、福島さん、RUBY ROOMの皆さん、
そしてご来場いただいた皆さま、本当にありがとう御座いました!

終演後は物販を粘り笑、ハコで軽く飲みつつ食事へ。

このご様子。
私は今日「絶対に飲む」と決めていたのでRUBY ROOMへ戻って飲み直し。
光の速さで朝になりラーメンを食べて終了。
早速次の企画への準備に取り掛かりながら木曜日の余韻に浸っていたのでした。

次回:RICH FOREVER SEMINAR vol.8
2020年3月20日
渋谷RUBY ROOMにて開催決定。
後日詳細。お楽しみに!

それでは、続きはwebで。チーン。

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