METAL TRASHING FIT II

by Yuji "Rerure" Kawaguchi #STDRUMS

#stdrums Daily

20210822【平沢進+会人(EJIN) 脱出系亞種音】〜FUJI ROCK FESTIVAL 2021〜

投稿日:2021年8月23日 更新日:

7月。
九州ツアー【RICH FOREVER TRIP 2021】の合間を縫って、曲覚えが始まる。

今回は事前調査任務を受け持っていた。
カンカンと鳴る、ハイピッチなスネア音色のご所望だ。
ツアーから戻り、8月から個人的なリハーサルを開始。

高音の抜ける音質が、全ての楽曲に適任ではないのが本件の難しいところ。
それぞれのスネアをスタジオへ持って行っての音実験。
部屋に常設の機材が意外なヒントを与えてくれたりもする。
『好きな音』から『理想の音』探しへ。

経過のなかではトリプル・スネアも検討された。
楽曲が持つそれぞれの演奏手順を元に、配置を考える。
点数を増やせば可能性は広まるが、一瞬の判断の迷いがビートの遅れを生む。
私がシンバルの点数を極力増やさないのはこの理由が大きい。
最終的には慣れている 13″×3″ と 14″×6.5″ 2台のスネアに落ち着いた。

なんとかして楽曲も身体に入り、メンバーでのリハーサルが始まる。
【平沢進+会人(EJIN)】での、いかにもバンドらしいスタジオ・リハは珍しい模様。
薄胴でのリムショットで、狙っていたスネアの音は合格。
一安心も束の間、順番に演奏して “BEACON” を終えると、ドラムフレーズの話となった。
この楽曲は今年4月【24曼荼羅(不死MANDALA)】にて、新曲として披露している。

これまでは完成した音源に合わせて、想像でドラムパターンを作っていた。
今回は新しい試みとして、各楽曲のステム・データを入手している。
ドラムのみを分析し、原曲で打ち込まれているパターンに近しい演奏を可能にした。
“BEACON” のドラムパターンを確認すると、フレーズが違っていたのだ。
大太鼓の低音がリズムの中枢を担い、複数のパーカッション音が組み合わさっている。

原曲データに近しいような演奏で改めて叩き始めると、停止してボスから一言。
「グルーヴするのは禁止です。」
??????????????

ハロー、ヒラサワ、何を、言っているのか、わからねぇ。
音楽が回転し、ノリが出る状態を禁止にするとは。
世の中には、本当に様々な理想と要求があるのだと、感服せざるを得ない。

グルーヴとは特にニュアンスめいた言葉なので、もう少し掘り下げ、共有する。
理想とする打点を意図的にずらす(下手に聴かせる)ことが目的では無い。
テクニックや正確性の要求ではなく、ダイナミクス・休符の扱い。
ここに於いてグルーヴとは『音が埋まりスムースに繋がっていくこと』を指すようだ。
対に位置する状態を自分なりの解釈と条件で並べてみると、こうなる。

・実音と実音の間を埋めず、休符の活用
・回転させず、繰り返し効果音の様に鳴る状態
・決まった手順をアレンジせずに、タイミングを守って演奏する
あら不思議。
私のプレイ・スタイルと自負するものは、これと真逆の状態なのである。
ゴーストノートで埋める・回転していく・アドリブで自由な演奏。
【平沢進】に言わせるところ、グルーヴしてしまうドラマーなのだ。

新たな可能性を秘める『グルーヴ禁止』を、喜ばずして何をしようか。
ペンでの執筆で例えれば、流れに任せた筆記体での作文を続けてきた。
勢いとスピード感は、確かにある。
だが、止めやハネ・漢字のディティールや全体の文字バランス。
そして行間。
『伝える』以外は極めて苦手であり、ドラムに於いても持ち合わせていないスタイル。
人の性格がそのまま現れるから音楽は面白い。
様々な手札を持ち合わせ、場面で選択できる状態こそが理想。

8月中旬。
バンドメンバーでのリハーサルを経て、本番想定のいわゆるゲネプロ・リハ。
初日を終え、ふと本番ステージでの演奏のイメージが降ってきた。

路上ライヴでは観衆との距離感を想定して、適度な音量を出すように心掛けている。
ホワイト・ステージも、バスキングも、野外という意味では同じ環境下だ。
FUJI ROCKの大きなステージでは、音量も限りなく大きい方がいいのか…?
かつてロック・ミュージックが流行り、コンサートの規模は野外にまで広がった。
ギターアンプとPAシステムの進化はあれど、ドラムには本体の音量が求められた。
結果アクリル製のVistaliteや、ステンレス製のキットが生まれたという。

ゲネプロ最終日、私はもう1つスネアドラムを持っていった。
1920年代の Leedy 15″×3″、約100年前に製造された超ヴィンテージ・スネア。
現代では14か13インチが主流で、15インチは消耗品が手に入りにくい。
チューニングにはマイナスドライバーを使用。
ヘッドはまだ牛革を使っていた時代、内部にヒーターを取り付けるネジ穴がある。
例外だらけの汎用性が効かない規格だが、カンカンに鳴る・そして何より、音が大きい。
一世紀前の職人の腕から、現代へ託されたバトンのようだ。
こうして使用スネアも決定。

割れては削りを繰り返し使ってきたハイハットも潮時。
粉砕したマレットも新品を手に入れて準備万端。

8月22日。
前日に現地へ到着している我々は出演時間までの時間を過ごしていた。
ホテルにはWi-Fiが完備しているが、電波状況がまばらである。

ドア前(踏み込み)にて電波の安定を確認し、こんな所でパソコン作業。
ブログ更新に火が点くフジロック出演当日。

お昼にお蕎麦と天ぷらもいただき、お風呂に入って仮眠。
正月みたいな過ごし方だな…。

散歩をして夕刻。
会場入りの時間が訪れる。

送迎車に乗り込み、単線の山中を走る。
自然界の闇夜に入り混じるレーザーライトと低音。
初体験のフジロック。
会場内ではマスク着用・人数制限・禁酒・声出し禁止がルールとされていた。
異常事態が飲み込まれた新しい世界。

関係者のルートと思われる、極めて暗く・細い道を慎重に進んでステージ裏へ到着。
早速ドラムの仮組みに手を付ける。
既にシンバルには霜が降りていた。
晴れ間を見せた天気は一瞬で大雨となり、現在は落ち着いている。
舞台転換を終えて、サウンドチェックのためステージへ。

やはり、知っている感覚だ。
オープンエアーなキックと、スネアの鳴り。
新体験への興味と故郷へ帰ってきたかのような意識が入り混じる。
整備されたコンサート・ステージから路上ライヴの情景へと紐付いた。
リハーサルが無いため、質感を事前に確認できたのも助かる。

楽屋テントにて衣装諸々の準備を経て、開演5分前。
ギリギリのタイミングで新たなヒントを頂けるのも、もはや恒例行事。
ステージ袖に辿り着いたそのとき、ようやく実感を得た。
やれるのか。
開演を示すSEが流れ、メットを被った御大に続きステージへ向かった。

【脱出系亞種音】と名付けられた今回のステージ。
しもて・斜め横向きに配置されたドラム。
1曲目 “COLD SONG” フロアタムの打数は鬱憤のバロメーターとも言えよう。

今回のセットリストで特に印象的だった曲は “ENOLA “と “Big Brother”。
(前者は P-MODEL の中でも特に好きな、念願の1曲。)
この2曲は打ち込みドラムだからこそ持ち合わせる質感を持っている。
特有の音質・人には出せない平坦なリズムだから生まれる、独特のノリ。
ドラムでの生演奏をしてしまうことで、随分と印象が変わってしまう。
打ち込みを長所として活かす方法を、実際に演奏することで見い出すことができた。

では、私が叩いて『回転してしまう』場合のメリットを見い出そう。
非・グルーヴ研究 “BEACON”, “消えるTOPIA” を経て得られたヒントでもある。
“Big Brother” は音源通りのフレーズをコピー。
だが “ENOLA” に関してはどうもパッとしない。
つまりそれは、打ち込みデータのまま演奏してしまっても面白くない要素がある。
ハマりそうなフレーズを思い付いたのは、まさに本番直前の移動中。
即ち “ハマっていたか” はオーディエンスのみぞ知る結果となった。

“幽霊列車” ではローピッチのスネアを叩きたい。
この曲と “消えるTOPIA” がトリプル・スネア導入の検討理由であった。
解決策として、丸く切り取ったドラムヘッドをサイドスネアへ重ねての演奏。
デッドなサウンドになるため、もう一段階ピッチを落ち着かせることができる。

“PARADE” では、原曲の打ち込みドラムと共に演奏。
この曲の重厚感を保持するに、1台の生ドラムだけではどうしても力不足となった。
楽曲と共に行進していくイメージと苗場が結び付き、思わず声が出る。
一昨日もパプリカを観たばかりだぜ。
打ち込みと一緒に演奏する新鮮さは #STDRUMS にも大いに活かせそうだ。

“夢みる機械” はいわゆる『エイト・ビート』が一切出てこない奇天烈ドラミング。
音源の再現性を特に研究した楽曲。
小道具・テスラコイルなど総出でのハイライトとなったであろう。
アガった〜。

“救済の技法” 最難関曲の1つ。
4の倍数の小節数で進行していく楽曲に対して、ドラムパターンは3小節のループ。
それでありながら曲の節目に合わせてシンバルを入れていかなければならない。
これこそまさに、打ち込みの業。人力テクノである。

ギターからは予想外のノイズが流出していたらしい。
40年以上ステージに立ち続けても尚、不意なハプニングは発生する。
ライヴの進行を優先し、現状を受け入れて手元でのコントロール調整。
40年以上ステージに立ち続けている【平沢進】故の説得力だ。

アンコールに “庭師KING” (of名曲)を経て、約1時間半のステージは終了。
ギタートラブルにより “HUMAN-LE” はカット。
(福岡コウちゃんが一番好きな曲だったのが本当に悔やまれる。)
FUJI ROCK FESTIVAL 2021 day3、White Stageの最終日を締め括った。

遡れば一昨年11月、BATTLESツアーから、このステージまで辿り着いた。
『好きな演奏』から『理想の演奏』探しへ。
適切な課題と提案の数々は、想像を遥かに超える経験値として貯蓄されている。
こんなドラマーを選出いただき、本当にありがとう御座いました!

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

4月末。
大阪フェスティバルホールにて開催された【24曼荼羅(不死MANDALA)】
スネアドラムを計240000発叩き、達成の暁に『フジ登山権』を手に入れた(?)。
こうして今回 “FUJI ROCK FESTIVAL 2021” への参加が決定。
(こうして???)

20210429【平沢進+会人(EJIN) 24曼荼羅(不死MANDALA)】〜大阪フェスティバルホール2日目〜

素直に喜べないのは、約1年半に渡る現状を見届けてきているからだ。
なんとか開催しようと、前向きに動いてきたイベント・企画は軒並み頓挫した。
初めから完全中止ならまだしも、ルールをころころ変えて杜撰に振り回す政府官僚。

開催される希望より、中止の失望を受けない方が身体に優しい。
前日に現地入りをしたところで、突如中止を言い渡される可能性も充分に有り得る。
ぬか喜びにならないよう、自分自身に対して期待を抑えていた。

20:30。
苗場の楽屋テントで進んでいく時計を眺めていたとき。
これはひょっとして、やれるのか?
少しだけ、現実味を帯びてきた。

20:55。
ようやく確信したのはステージ袖に辿り着いたそのときだった。
やれるのか。
本当ならば、誰よりも楽しみにしていただろう。
本音ならば、指折り数えて待ち望みたかったこの日。
この日のために生きてきた。
突如として期待感・焦燥感・充足感が身体中を駆け巡る。
必要以上に音量を出そうとしまいと、深呼吸をしながら自分に言い聞かせる。
ならば、いつも通りの、楽しい演奏を。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

アルコール禁止
声出し禁止
マスク必須
黙食

こうして書き出すだけでも、人として情けなく・面目無い気持ちになる。
果たして意味と効果があるのか、冷静に考えれば誰だってわかる。

(送られてきたつつみの写真)
他人が敷いたレールの上で文脈を無視した一方的で無責任な文字列が並ぶ。
匿名アカウントという証明が自己顕示欲を満たし、人間としての交流は絶望的に歪んでいる。
嫉視を全く持ち合わせない冷静な批評は全体の何割を満たすだろう。
もし発生源に関して言及するのであれば、発症が無かった結果も平等に鑑別すべきだ。
そもそも目に見えない相手の感染経路の根元を突き止めることなど不可能なのだが。

ガイドラインを守れば開催が認められるのは、何故か。
同じ季節を2度経験しても尚、状況が困窮し続けているのは、何故か。
飲食店・ライヴハウスが1年以上まともな営業をせず、何が生まれたか。
他人同士、見るべきその先は、何処だ。
疑うべきは、現状とシステムの根幹である。

開催側の弛まぬ努力を、私は実感として知っている。
私自身もイベントを組み、ツアーを組んでもらい、中止を何度となく言い渡された立場。
身に染みてよくわかる。

私は事実として目で見たものを判断・評価する。
“FUJI ROCK FESTIVAL 2021”
この世情と国に関わらず、本当によくぞ開催して下さった。
関わった全ての方に、最大限の謝辞を。

お互いを尊重し、目に見えぬ分断に惑わされず、話し合って生きていきていく。
当たり前を当たり前に行う、当然の日常。
其々の意思、其々の判断であれば、何でも結構。
心身ともに、どうぞご健康で。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

翌日の23日。
集まった4人は其々の生活へ戻っていく。
遠足と正月と不安と期待が詰まった苗場ツアーもこれでおしまい。
改めまして【平沢進+会人(EJIN)】ご来場・ご閲覧をありがとう御座いました。
また同じ、ではなく、より健全な景色を、また見れることを楽しみにしています。
暗くてあんまり見えてないけどな!

それでは、続きはwebで。チーン。

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